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【 コンサルタントのインサイト 】
本シリーズは、Regrit Partnersに所属するコンサルタントが過去に
携わったプロジェクトの経験を横断的に俯瞰し、個別ソリューション
や産業に関する独自のインサイトを発信する記事です
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株式会社Regrit Partners
Associate Principal / Technology
大野 智洋

目次


製造業の「サプライチェーンマネジメント[i](以降SCM)」の最初に位置する「サプライヤー[ii]」のDXについて解説する。

1.近年の製造業サプライヤーの改革テーマ

製造業におけるサプライヤーはSCMにおける「サプライヤー → メーカー → 物流事業者 → 販売事業者 → エンドユーザー」という流れの中で最初に位置している。
また、部材をメーカーに提供するサプライヤーの収益の源泉は顧客であるメーカーである。そのため、サプライヤーとメーカーで重視することに違いがある(図1)。

図1 サプライヤーvsメーカーにて重視する点の違い

加えてサプライヤーにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)では下記の取り組みを意識的に重視する流れがある。 
 1.納期遵守率の維持と向上
 2.コストコントロール力の向上(原価管理の高精度化)

上記の実現の為には下記の改革テーマがあり、これらを実現するためにIT基幹システムの刷新が必要となる。
 1.基幹システム、主に生産領域を見直し柔軟な業務・システムを実現
 2.販売計画・生産計画・調達計画のリアルタイム化と精度向上
 3.上記を成し遂げ、経営効果を得るためのオペレーション改革

2.製造業DXの狙いと効果

上記の改革に取り組む狙いと効果は以下がある。

■狙い
 ・販売、受注管理などの管理業務の効率化
 ・販売~調達~生産~納品のトレーサビリティ実現
 ・販売、生産、調達計画の精度向上

■効果
 ・生産負荷の平準化による残業、労務費の抑制と低減
 ・社員の余剰時間をうむことで、成長分野に割り当てることが可能(リスキング)
 ・納期遵守率の維持と向上による、メーカーとの信頼確保

3.製造業DX実現を阻む課題

しかしながら生産管理などの基幹システム刷新では、下記のような壁に阻まれてしまうケースがある。

 1.有識者が不在となり老朽化したシステムにより、詳細な要件検討を進められない
 2.業務を理解し、基幹システム刷新を担える担当の不足により、見直しを進められない
 3.現状維持なシステム刷新となり、経営インパクトを見いだせない
 4.システム見直しによって発生する業務変更に現場が反発が発生して現状維持となる

4.製造業DXの進め方

上記のような壁を乗り越えるためには、経営と現場(主に生産部門)の双方で、改革の意義と目標とする効果を定めるのが大事である。
また、改革の領域を生産管理よりか製造現場よりかに分けておくことも重要である。

これらを明確にしていく考え方としては下記枠組みがある。後半の記事ではこの枠組みを元にどうすればDXの一歩を踏み出せるか解説していく。

図2 ありたいシステムを描く上での思考の流れ

最後に、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをお断りする。

第2回記事はこちら↓

製造業サプライヤーDXの目標設定の手順~製造業サプライヤーのDXの進め方~


[i] サプライチェーンマネジメントの「サプライチェーン」とは、原材料が調達されてから商品が消費者に渡るまでの生産・流通プロセスを指し、「原材料・部品調達 → 生産 → 物流・流通 → 販売」の一連連鎖。

[ii] 本記事でのサプライヤーは複数メーカーに部材を提供している部品製造の企業を想定しています。

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