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【 コンサルタントのインサイト 】
本シリーズは、Regrit Partnersに所属するコンサルタントが過去に
携わったプロジェクトの経験を横断的に俯瞰し、個別ソリューション
や産業に関する独自のインサイトを発信する記事です
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株式会社Regrit Partners
Managing Director / Operation
福川 朝陽

これまで、数多くの営業領域の改革に携わらせていただいてきたが、よくあるテーマの一つがCRM・SFA導入を伴う営業生産性の向上である。
まず「営業生産性の向上」という言葉の定義から始めるが、経営資源としての営業工数をインプット、営業活動そのものをプロセス、営業活動から上がる売上をアウトプットとすると、営業活動の生産性を向上し売上を最大化すること」となる。
営業活動における生産性を端的に表すと、提案数(打席)×受注率(打率)で表すことができるが、CRM・SFA導入を伴うとなぜか一気に営業生産性の向上の色が薄れ業務の効率化という言葉が付きまとってくる。
結果、本来の目的が棚上げされる、または、色合いが薄れ、業務の効率化が主目的にすり替わって取り組みが進んでいくこととなる。
今回の記事では、なぜこのような状況が起きてしまうのか、成功に向けてはまず何をすべきなのかについて述べていきたい。

当社がこれまで支援してきた CRM・SFA導入を伴う営業生産性向上のためのプロジェクトを大きく類型化すると依頼元は大きく3つあり、営業部門そのもの、経営企画等の企画部門、IT部門(DX部門)となる。
この中で、営業部門そのものが依頼元の場合は主目的が失われにくい。残る2つの部門が依頼元となると、支援を進めていく中で業務効率化が主目的にすり替わってしまいがちになる。
なぜこのようなことが起きるかを紐解くと、実は非常に簡単な結論がでる。
営業のトップが営業生産性の向上にはCRM・SFAの導入は重要ではないと捉えているからである。
そのため、経営企画等の企画部門やIT部門が、営業生産性向上のために良かれと思ってCRM・SFAの導入を企画・推進したとしても、営業トップは重要ではないと捉えていることから、どうしても導入における費用対効果を算出するタイミングで業務の効率化の話題が上がり、以降、業務の効率化が主目的にすり替わっていくのである。
そもそも、企画・構想の段階で費用対効果を営業部門のトップと合意形成し、合意形成した内容で進んでいけばこの問題は起こりにくい。経営陣によるトップダウンでの導入指示やDX推進の名のもとにIT部門やDX関連の予算枠で企画・構想が始まった場合は、この問題が起きがちで、かつ、このような状況で進んでいくことが非常に多いと感じている。

営業部門のトップが営業生産性向上にCRM・SFAが重要ではないと捉えている問題がなぜ起こるかというと、原因はCRM・SFAが日々営業活動を推進している担当者のためのツールという思い違いである。
CRM・SFAは、もちろん担当者のためのソリューションでもあるが、本来はトップおよびミドルマネジメント向けのソリューションであり、ソリューション導入における効果創出には、むしろトップおよびミドルマネジメントの徹底的な活用が欠かせない。
まず、トップマネジメントは経営から求められる予算達成に向け、ありとあらゆる手段を考える。その実行をミドルマネジメントに託し、予算達成に向けた進捗をつぶさにモニタリングし、必要があれば軌道修正を行う。
ミドルマネジメントは、託された内容と予算を担当者に理解浸透を図り、必要があれば伴走し、時には叱咤・鼓舞し、予算達成に向けた進捗をつぶさにモニタリングする。また、問題があれば状況を正しく・即座にトップマネジメントに共有し対策を立てていく。
この一連の流れを高速かつ継続的に、定量情報をもとに、いつでもしかるべき時に実施できるようにするのがCRM・SFA導入におけるトップ・ミドルマネジメント向けの最大の意義であり、効果を最大化するための活用状況である。が、この内容が理解されていない・伝わってないことが非常に多く、前述の問題起きる。

CRM・SFA導入を伴う営業生産性の向上にあたって、どの部門が推進するかは組織体制や予算獲得しやすい部門、経営判断も含む内容でもあるため問わないが、営業トップ・ミドルマネジメントがソリューション導入の意義を理解し、活用するというコミットメントがまずは何よりも重要となる。
次回は、なぜ意義が理解されていない・伝わっていない、という状況が起きてしまうのかを紐解いていきたい。

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