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【 コンサルタントのインサイト 】
本シリーズは、Regrit Partnersに所属するコンサルタントが過去に
携わったプロジェクトの経験を横断的に俯瞰し、個別ソリューション
や産業に関する独自のインサイトを発信する記事です
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株式会社Regrit Partners
Associate Principal / Technology
大野 智洋

目次


前編では近年におけるサプライヤーの改革テーマを解説し、改革領域を”生産管理”か”製造現場”よりかにわけていくことが重要だと説いた。
後編では引き続き、製造業の「サプライチェーンマネジメント[i](以降SCM)」の最初に位置する「サプライヤー[ii]」のDXについて解説する。

前編記事はこちら↓

製造業DXの効果と進める上での課題とは?~製造業サプライヤーDXの進め方(前半)~【コンサルタントのインサイト】

1.改革の意義と目標をどう設定するか

まず、改革テーマを定めるための意義・目標を設定するに下記枠組みを元に深掘りしていく。

1-1 解消したい問題の設定

業務上で常日頃から意識している問題を洗い出す。経営インパクトが大きい問題であるかどうかを問い続け、経営に影響を与える問題を設定する。

1-2 解決したい課題の設定

1で設定した問題を解消するための「業務面での課題」を設定する。この課題の解決が1の問題を解決するのか、さらに課題があるのかを掘り下げる。

1-3 意思決定プロセスの課題

生産管理などの業務では常に何らかの意思決定を行い、生産指示や改善活動をしている。2で設定した課題を解決するために実現したい意思決定のプロセス・機能を設定する。

この検討は重要であるが、難易度が高いため下記の点を考慮しているかのチェックを推奨する。

● 具体的な意思決定を表しているかどうか
例)「***という選択肢を洗い出し、***を選ぶ」

● 課題に具体性があるかどうか
例)「不良品の原因を特定するため、原因一覧と可能性を可視化する」
  「外観検査にて生産品から不良品を選定するプロセスにおいて、見落とし率をX%未満にする」

1-4 何を解決するか

3で設定した意思決定プロセスの課題を解決するために必要とする、ITシステムや業務を設定する。
この段階では「必要生産量の計算」や「異常検知」など多少の曖昧性はあってよいが、下記の点はチェックすべきである。

● ビジネス、経営課題を解消するストーリーとして論理的に正しく、納得できる内容となっているか(左のコマは右のコマに役立つか)

● ビジネスとして実効性のある解決シナリオとなっているか

2.システム観点での近年の生産改革の領域

前述の改革テーマを設定した場合、DXを推進するために生産管理システムなどIT側の刷新・機能追加を検討していく場面が多い。
その場合、管理業務を主な範囲とする「生産管理システム」を見直すか、製造側での生産スケジュール・負荷調整を行う「生産スケジューラ」のどちらを検討するかを棲み分けておくことを推奨する。
下記のように比較を行うことで、どちらを具体的に検討するかの棲み分けを決定する。

以前は高額だった「生産スケジューラ」も近年ではライセンス料が数百万円から購入できるものがあり、特定の工場または品目からスモールスタートしていくことができる。
※ただし自社の人員が不足している場合はコンサルティングやSIerの支援を得ることになるため、+αの費用が必要となる可能性がある。

3.まとめ

今回は製造サプライヤーにおける改革テーマの設定、システム観点での生産改革について解説した。 本記事がみなさまの生産業務の改善ヒントになれば幸いである。

今後は「生産管理システムを刷新する場合での検討ポイント」や「生産スケジューラの使いこなしポイント」について解説していきたい。

本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをご了承いただきたい。
最後にご一読いただき感謝申し上げる。

■参考文献
河本薫「データ分析・AIを実務に活かす データドリブン思考」 P.45「サクセスシナリオにおける思考の流れ」  ダイヤモンド社2022年1月


[i] サプライチェーンマネジメントの「サプライチェーン」とは、原材料が調達されてから商品が消費者に渡るまでの生産・流通プロセスを指し、「原材料・部品調達 → 生産 → 物流・流通 → 販売」の一連連鎖。

[ii] 本記事でのサプライヤーは複数メーカーに部材を提供している部品製造の企業を想定しています。

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